Column コラム
【借りられる金額】と【借りていい金額】
住宅ローンで最も重要なポイント!
「返済率」って知ってますか?
一般的に、返済期間が30年前後に渡る住宅ローンについて、
一番心配なのは「本当に返済し続けられるだろうか」ということではないでしょうか。
住宅を購入する時には、ほとんどの方が住宅ローンを利用します。
住宅ローンを借り入れするにあたっては、必ず知っておいていただきたいことがあります。
それは、住宅ローンでは「借りられる金額」と「借りていい金額」は違う」ということです。
金融機関が審査を通してくれる金額(=借りられる金額)と、
無理なく返済を続けられる金額(=借りていい金額)はイコールではありません。
実際に、住宅ローンを借りすぎてしまい、返済のために生活が困窮してしまう方がいらっしゃいます。
より良い生活を実現するために住宅を購入したはずなのに、そうなってしまっては本末転倒です。
安心して住宅ローンを利用するためにとても重要な「返済率」について解説します。
そもそも「返済率」ってなに?
すでにご存じのかたも多いと思いますが、
「返済率」とは「年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合」のことです。
返済比率とは、「年収に占める返済額の割合」のことを言います。
返済比率を求める計算式は、下の通りです。
返済比率(%)=年間返済額÷年収×100
例えば、年収が500万円の場合、年間返済額が100万円なら返済率は20%となります。
この返済率は、住宅ローンを長期に渡り確実に返済していくための「大事な指標」となります。
住宅ローンの審査でも重視される「返済率」
返済率は住宅ローンの審査でも重要なポイントとなります。
審査を行う金融機関によって、そしてローンの申込みをする人の年収等によっても基準は異なりますが、
多くの金融機関では返済比率の上限を25~35%前後で設定しています。
ただし、審査時には実際の融資金利ではなく、
各金融機関が独自の「審査金利」を用いて、返済率を計算しています(フラット35以外)。
返済比率はどう決めればいい?
住宅ローンを利用する場合、この返済比率をどの程度に設定すれば良いのでしょうか?
たとえば金融機関などで住宅ローンの相談をしたとき、
「○○様のこの返済比率でしたら何の問題もありません」といわれたとしましょう。
ただし、ここで「何の問題もない」のは、
あくまで金融機関から見た返済比率についてです。
返済比率を考えるうえで重要なことは、
「金融機関が考える最適な返済比率」と「自分にとっての最適な返済比率」は
違う
ということです。
まず、「自分は年間収入をどれくらい住宅のために支出できるか」を考えてみましょう。
たとえば、他に借り入れのない年収500万円のサラリーマンの方が、
審査金利1%で35年の住宅ローンを利用する場合を考えてみましょう。
利用する金融機関が年収500万円の方に定める最大の返済比率が35%であれば、
借りられる額は次のように求められます。
500万円÷12ヶ月×35%=145,833円…(1)(おおよその毎月返済額)
(1)÷100万円当たりの毎月返済額(2,822円)(※)=51.65…(2)
(2)は100万円当たりの数字なので、(2)×100万円=5,165万円(3)
少し補足をしておきましょう。
まず、月の収入に返済比率(35%)をかけると、おおよその毎月の返済額を求めることができます。
これが(1)です。この(1)を、100万円当たりの毎月返済額で割ると、
100万円の何倍の借入額に対する返済額かがわかります。
その結果、(2)の通り、100万円の51.65倍という結果になりましたので、
これに100万円をかけて5,165万円という金額が導き出されます。
なお、「35年返済、審査金利1%の100万円当たりの毎月返済額」は、
関数電卓を使って求めるか、住宅ローンの返済額早見表で確認することができます。
計算結果は、5,165万円となりましたが、
通常、住宅ローンは10万円単位で融資を行う金融機関が多いので、10万円未満は切り捨てて、
このケースでは最大で5,160万円まで住宅ローンが借りられる、ということになり、
毎月の返済額は145,807円となります。
自分にとって最適な返済率とは?
人によって、「日常生活上の支出」の項目やその割合は千差万別です。
もちろん、「家」を購入するうえで日常生活の支出バランスについて変えざるを得ないこともあるでしょうし、
そうする努力も必要でしょう。
しかし冒頭で示したとおり、住宅ローンは長期に渡り返済を続けなければなりません。
万が一、その返済が滞ってしまうと、これまでの平穏な生活に重大な支障がでてしまいます。
安心して住宅ローンの返済を続けるためには、
自分が住宅のために毎月、毎年どれくらい支出できるのかを知ることが重要なのです。
現在、賃貸住宅にお住いの場合は、支払っている家賃を目安に住宅費(住宅ローン+維持費)
としての支出可能額を算出してみましょう。
現在の住宅費との比較
現在の家賃が高い(住宅費の割合を減らしたい)と感じているなら、
住宅ローンの返済額を現在の家賃以下に設定する必要があります。
逆に、現在の家賃を安い(住宅費の割合を増やせる)と感じているなら、
その程度に合わせて住宅ローンの返済額を設定してみてください。
そして、その返済額から借入額を算出してみましょう。
例えば、現在の家賃が8万円として、その家賃が自分の住宅費として適正だと感じている場合、
そこから逆算した借入額は約2,960万円です(変動金利0.725%、期間35年、元利均等払の場合)。
仮に年収が500万円だとすると、返済率は約19.2%となり、
一般的には「問題のない返済率」といえます。
しかし、購入する住宅がマンションだった場合、
上記8万円の住宅ローン返済額のほかに、
住宅の維持費として「管理費・修繕積立金」が毎月必要となり、
これまでより住宅費はアップします。
また、マンション・戸建問わず、不動産を所有すると
「固定資産税や都市計画税」が毎年課税されます。
住宅は購入後にもお金がかかる
住宅ローンが最大いくらまで借りられるかがわかれば、
次の問題は、「借り入れした住宅ローンを毎月きちんと返済していけるかどうか」ということになります。
ここで忘れてはいけないのは、住宅を購入すると、
住宅ローン返済の他にも負担しなければいけない費用が発生することです。
ここで住宅を購入した後にかかるお金を考えてみましょう。
具体的には、次のようなお金が毎月、あるいは毎年必要になります。
(1)固定資産税・都市計画税などの税金
不動産を所有することで「固定資産税」と「都市計画税」が毎年課税されます。
土地や建物の面積が大きければ大きいほど、立地が良ければよいほど、
建物は新しいほど税金は高くなります。
税金がいくらになるかは、所有する土地や建物の評価額によって異なり、
その評価額も3年に一度見直しされ、変化していきます。
(2)修繕費等
マンションであれば、毎月「管理費」と「修繕積立金」の支払い(積み立て)が必要になります。
マンションによってその額はバラバラですが、所有する建物の面積が大きければ大きいほど、
また建物が古くなればその分、修繕積立金は高くなっていきます。
たとえば、築10年程度の70㎡程度のマンションなら、
平均的に管理と修繕積立金で2万~3万円程度は毎月支払うことになります。
一戸建てであれば、毎月決まって管理費や修繕積立金を支払う必要はありませんが、
建物の劣化が進めば、その都度補修が必要になりますので、
ある程度自分で予算を確保しておかなければなりません。
借りていい金額はどれくらい? 年収500万円のケースで試算
住宅ローンの「借りられる金額」については前述の通りですが、
これは「借りていい金額」とはイコールではありません。
では、実際どのくらいまで住宅ローンを借りてもいいものなのでしょうか。
具体的な金額は、各家庭の収入と支出とバランスによるので、一概には言えませんが、
一般的に住居費の目安としては「年収の20~25%」ぐらいが理想的と言われています。
ただし、実際には年収が相対的に低い方の方が、年収に占める住居費の割合が高くなる傾向があるため、
「年収の30%」ぐらいを住居費が占めている方が多いようです。
ここで言う“住居費”とは、住宅を維持する費用も含まれるので、
住宅ローン以外の前述した購入後にかかる費用も含んで考えなければなりません。
そこで、この目安となる住居費の割合と、
購入後にかかる費用を参考にして、適正な返済比率と借入額を考えてみましょう。
先ほどの例によると、他に借り入れのない年収500万円のサラリーマンの方が、
審査金利1%で35年の住宅ローンを利用する場合に、
利用する金融機関が年収500万円の方に定める最大の返済比率が35%であれば、
最大借り入れ可能額は5,160万円、その場合の毎月返済額は145,807円でした。
一方、前述した通り、一般的に理想的な住居費の目安は年収の20~25%ぐらいと言われています。
理想的な住居費の目安を年収の25%とすると、年収500万円の方の場合、
毎月の理想的な住居費は、
500万円×25%÷12ヶ月=104,166円/月
となります。
仮に、購入する物件がマンションだった場合、
そのマンションの固定資産税等税金が毎年15万円(12,500円/月相当)、
管理費と修繕積立金が毎月25,000円かかるとします。
この場合、税金と管理費等を合わせた毎月の負担額は、12,500円+25,000円=37,500円です。
毎月の理想的な住居費である104,166円から、この37,500円を差し引いた額が、
住宅ローンの返済額に充てられる金額です。
104,166円-37,500円=66,666円
次に毎月の返済額が66,666円となる住宅ローンの借入額を計算してみましょう。
66,666円を35年返済、審査金利1%で100万円を借りた場合の毎月返済額(ボーナス払い無し)である2,822円で割り戻すと、
66,666円÷2,822円=23.61
となります。
借り入れ額は100万円の23.61倍ということですから、
これを10万円単位の融資額に置き換えると次の計算式の通りです
23.61×100万円≒2,360万円
この2,360万円が、年収500万円の方が借りていい住宅ローンの金額ということになり、
返済比率は15.98%となります。金融機関が許容する返済負担率と比べると、
かなり少ないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。
適正な返済比率はどれくらい?
ただ、これでは融資額が少なくなってしまうため、
現実的には住宅を購入することがむずかしくなってしまうでしょう。
そこで、現実的な範囲で住居費の年収に占める割合を30%とすると、
年収500万円の方の場合、毎月の支払い可能な住居費は125,000円となり、
上記と同様の計算をすると、借り入れ可能な住宅ローンは3,090万円となります。
このときの住宅ローンの返済比率は、20.93%となります。
この場合、もし、物件価格の100%を住宅ローンで賄うのであれば、
物件価格は3,090万円まで、同じく90%を賄う場合の物件価格は3,430万円となります。
このように、自己資金をどこまで用意できるかによって購入できる物件の価格が異なってきます。
税金や管理費等の金額によっても、適正な住宅ローンの借入可能額は変わってきます。
以上のように、
住宅ローンの借り入れ金額を考える際には、住宅ローンだけで考えるのではなく、
税金や修繕費、管理費などを含めた“住居費”全体で考えなければなりません。
そのため、住宅ローンの適正な返済比率は20%前後、
一戸建てのように毎月かかる修繕費や管理費が少ない場合でも、25%以内に抑えておくことをおすすめします。
なお、これから年収が確実に上昇していくという方の場合、
現在の返済比率を高めにして借り入れ金額を増やすことも考えられます。
ですが、将来的には子どもの誕生や成長に伴う支出なども増えてくるので、
そういった場合でも、できる限り返済比率は抑えて、
20%~25%以内にしておくのがよいでしょう。
「どれくらい借りられるか」ではない
これ以外にも、家族構成や車のローン、
子どもの学費など、その家庭ごとに支出の中身は様々です。
「融資審査が通る返済率」や「一般的に問題ない返済率」についてはあくまで目安程度として捉え、
「どれくらい借りられるか」ではなく「自分が住宅費として支出できるのはいくらか」
を把握して住宅ローンを利用しましょう。